とこしえの夜

犬口マズルと申します ずっと夜が続きます

掲載11・読売歌壇/長い日記

読売歌壇に掲載していただきました。

評もいただきました。

 

約束をしなくてもいい秋が来て帰ればきみが待つ家がある

 

2022.09.26  読売歌壇  1席  俵万智選 

 

【評】

上の句、一瞬失恋の歌かと思わせられる。約束をする必要がないとは、すなわち別れてしまったのかと。そこからの幸せなどんでん返しが心憎い。一緒に住むとは、そういうことなのである。

 

 

この短歌を姉に捧ぐ。

4か月ぶりの掲載でした。これからも頑張ります。

めくるめく夜の不思議。この曲のスピッツのMVかわいいよね。

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夏頃から忙しくなり、短歌を作っても上手くいかない日が続いた。短歌には背骨があってどうにか真っすぐであろうと努めても忙しさに負けて歪んでしまうようになった。人体と同じで、短歌の背骨が歪むとどれだけ作っても不調が続くようになる。いつか戻るのだと信じて作り続けるしかなかった。リハビリのような気分だった。定型を忘れないように。触れるものの輪郭を掴めるように。感覚に形を与えるように。虚構を現実に持って来られるように。短歌は難しい。感性だけで出来るものではないから。遠くに行きたいと思う。そのためには体と心と知識を大事にすることだ。いつも同じようなことしか言えない。でも、本当に大切なことだと思うから何回でも言う。体を大事にしてね。深い夜や遠い街、言葉の底に行くための力をいつでも残しておいて。

 

新聞歌壇も久しぶりに読んだ。同じ掲載欄に一ノ瀬さんがいた。一ノ瀬さんは以前同じ学校の違うクラスにいて、卒業してから話すようになった人だった。僕の本棚には一ノ瀬さんから教えてもらった本がある。もう読み終わった本とこれから読むために取っておいてあるものがある。それを見るたびにほんの少しのやり取りを思い出す。あまり話したことがなかったのに、好きな本を教えてもらっただけで親しくなったような気分になった。昔から学校ではそんなことばかりだった。あまり話したことはなかったけど、CDを貸してもらったとか好きな作家が同じだったとか、それだけで錠が一つ開いたような気持ちで接することができる人たちがいた。卒業後の進路は知らないし、連絡先も知らない。ただその思い出だけがあって、CDや本を見るたびにふと思い出す。

元気かな。僕にフジファブリックや9mmを教えてくれた人。大人計画が好きだと言っていたあの子。借りたままの冷静と情熱のあいだは今でも僕の部屋にある。銀杏BOYZレディオヘッドは今でも聞いている。ドリーム・シアターはもう聞かなくなってしまった。ナンバガは復活してまた解散する。スーパーカーのHelloが入ったMDのこと。西村ツチカさんの画集は買ったかい。ヴィレッジヴァンガードは全国のイオンに入ってるんだぜ。下北沢の改装工事は永遠ではなかったね。三連休が終わる。会社に行かなくちゃ。みんな今何をしているの。昔のことを昨日のように思い出して、昨日のことは百年も前のように感じます。今何をしているのかも、連絡先も知らない人たちが外してくれた錠が僕の後ろにたくさん落ちている。分かり合えるまではいかない、手のひらに収まるくらい小さなそれでも確かに存在していた「理解」で僕は生かされている。

 

長い。元気で。絶対に仕事に負けないでパーティーを続けようね。

南南西を目指してパーティーを続けよう(血界戦線Back2Backも終わってしまった…そんな…)

おやすみなさい。