とこしえの夜

犬口マズルと申します ずっと夜が続きます

【感想】読売歌壇感想

読売歌壇の好きな歌の感想を書きます。


まだ伸びるぐんぐん伸びる豆苗が北斎の波のかたちに伸びる/袴田朱夏


僕は日常風景の見え方が一気に変わるような歌が好きで、読んで以来こちらの歌をふとした瞬間に何度も思い出しました。俵さんの評にもあったように富嶽三十六景 神奈川沖浪裏のことなのでしょう。あの一度見たら忘れられない画の良さは臨場感のある、眼前に迫るような波。そんな波に例えて豆苗のかたちを描くことで日常の中に些細だけれど、豊かな刺激があるような気がします。




「あばよ」の声だけを残してぬばたまの次元大介どこへ消えたか/佐藤涼子


もう全部かっこいい。ルパンは子供の頃から親しんできたので、声優さんの世代交代は感慨深いものがあります。内容もですが、ぬたばたのが次元にかかる表現は胸を打たれます。全身真っ黒で飄々としながらも相棒の隣にいた彼がふっといなくなってしまう。姿形は同じだとしても何かが違っていて、その寂しさはなかなか埋められない。言葉にし得ぬ寂しさを表した作品だと思います。




それでは。

おやすみなさい。