連作・ままならない
もうすぐで三年になる会社にてすり減っただけのような気がする
どうだいと聞かれて笑う転職を諦めた人の表情筋で
それなりにやってはいける給料でそれなりにするパーティーナイト
まぁ悪くないとは思うレールから一度外れたあとの背筋で
期待などしないでほしい僕はただ給料のため目尻を下げる
責任が重くなりゆく日々がありじりじり変わる心の間取り
七時なのに明るいよって誰か言う西の魔法使いを想う
充電は使い切らずに取っておく夜の深さに耐え得る羽根を
帰宅して抱きついてくる犬がいて全然夢じゃなくてうれしい
老犬がいよいよもって老いてゆく冬の匂いの漂う臓腑
苦しみが喉元で割れガラス片刺さって痛い内側が痛い
投稿を少し控えてみたりする案外悔しくなくて、さみしい、
薄絹の向こうに言葉があるようで触れもしない短歌の肉体
落ち込んで背骨が曲がり球体になって輝き出すのが俺さ
それでもと奮い立たせて前を向く前を向くことだけが得意で
歩いても歩いても道目的地よりも大事な風景がある
魂は俺のものだし手放してまた掴んでも構わないだろ
***
絶対に労働したくないのに仕事がどんどん忙しくなり、生活はゆるやかに変化していって、心ばかりがこのクソみたいな日々に逆らっている。まあ仕方ないかなと思う反面、毎日パーティーをやりたいと思う自分もいて難しい。短歌に対する気持ちも変わってきて悔しいようで特に悔しくはなかったりして複雑だ。とにかくパーティーをやろう。音楽を流して明るい光の中に飛び込んでしっちゃかめっちゃかになるまで踊り続けよう。そうするしかない‼︎
おやすみなさい。
ネットプリント とこしえナイト・六月分/日記と布教
ネットプリント「とこしえナイト8」を発行しました。
もう七月なんて絶対嘘じゃんね。
◇内容◇
・自選 8首
・犬の短歌 5首
・夜の短歌 4首
・日記・診断
◇プリントについて◇
セブンイレブンのマルチコピーより印刷できます。
ネットプリントを選択→予約番号を入力→指示に従ってプリント
プリント予約番号:ZREL5BC6
価格:20円
期限:1週間(2022/7/16まで)
とこしえナイトは月に1度発行できるように頑張りながら1年間続ける予定のネットプリントです。同じテーマで作り続けると作歌がどう変化していくかを観察する実験でもあります。永遠に夜を終わらせないぞという気持ちでやって参ります。
-----------------------------------------------------
日記
ナナロク社のあたらしい歌集選考会の結果が発表されましたね。多賀盛剛さん・くろだたけしさんおめでとうございます。掲載されていた10首を詠み、すごいなぁと思いました。子供のような感想しか出てこない。どうしよう。
多賀盛剛さんの作品は早くすべて通して読みたいですね。歌の意味そのものだけでなく、構成や「、」の使い方を見てこういう連作の作り方もあるのかと驚きました。ほしがみえるという状態から始まり、個人の単位に留まるのではなく宇宙と地球・そして連綿と続いてきた人間の営みに触れられるような構成がすごいです。
そして、くろだたけしさんの作品。すごく好きでした。
「そうやってあなたは長く眠るから長く夢からつきまとわれる」
特にこの短歌が好きです。短歌に限らず、細部に着目した作品とより遠く離れて全体像を描き出す作品があるのですがくろだたけしさんは後者のような距離感を感じました。その距離感が適切だから優しくて、余白を感じられるのかなと思います(余白~に関しては木下さんの評に書かれています)お二人とも早く歌集が刊行されてほしいです。僕も頑張るぞ。なんかあんまり気張らずに。頑張ろう。
布教
アンブレラ・アカデミーを見てくれ!!
これが言いたかった!!アンブレラ・アカデミーはNetFlixで配信中の海外ドラマです。
◇あらすじ◇
超能力を持ち、かつては正義のヒーローとして活動していた兄妹「アンブレラ・アカデミー」 大人になり離れ離れになっていたものの養父の死をきっかけに再び一堂に会し、この世界を救うために奔走することになる。
現在シーズン3まで公開されているんですが、めちゃくちゃ面白い。僕は姉から紹介されて見始めたのですが姉以上にハマってしまって2周目に入っています。シーズン1のNetFlixJapanの予告を張っておきます。
超能力や、戦闘シーンのかっこよさなど魅力はいろいろあるんですが僕はこの物語の登場人物の人間関係が好きです。主人公にあたる兄妹たちを筆頭にほぼ全員の人格が破綻してる上に、みんなわがままなのですぐに人間関係がめちゃくちゃになるんですよ。そこがいい。なんでそういうことを言うんだ?!とか、仲良くしろ!!とか突っ込んでるのがすごく楽しい。みんな嘘をつくのが下手なのもかなり魅力的です。あと、「家族」という枠組みを守ろうとしているのも可愛いんですよね。嫌いで許せないくせに、家族をやめられないし諦められもしない人たちの物語だと思います。視聴者は神視点でしか見られないから、世界を救う目的のために頑張れよって思うけど、キャラクターはみんな守りたいものも愛してるものもあるから視聴者が望んだ展開にならないのがいいなぁと思ます。
それから、音楽も魅力的です。The StranglersやSweet・The Doorsなど名バンドの曲からビリー・アイリッシュのbadguy(カバーだけど)、原作者:ジェラルド・ウェイの新曲など70年代のバンドを中心として様々な楽曲が使用されています。戦闘シーンやダンスシーンもあるので印象に残る曲が多いですね。
そうそう、原作者がジェラルド・ウェイなんですよ!!マイケミの!!
僕全然知らなかったのでびっくりしたんですけどジェラルドって漫画も描いてたんですね。マイケミって何?って人はこれを見るんだ!このMy Chemical Romanceのボーカルが原作者のジェラルドです。
ジェラルドが楽曲提供をしていたりもして公式の動きが手厚いなぁと思います。
基本的に「毒親に育てられた家族の話」になるので兄妹間で序列をつけられたりつらいシーンもあったりするので、合わない・見られない人もいると思いますが面白いのでぜひ…。見たら教えてください。どのシーンが良かったか話してください…(切実)
それでは。
おやすみなさい。
短歌研究新人賞応募作品「ある街」
今日は二度目の更新です。住んでいる場所の関係などで短歌研究が手に入るのは少し先になりそうです。結果は後で確認するとして、応募した連作を公開します。楽しく読んでいただけたら幸いです。
「ある街」
昏倒の最中に届く招待状あなたは
飛び出して行かなくっちゃと会社飛び出して征かなくっちゃと白うさぎ
尊厳と生命掲げ二番線風が切符を拝見します
沈み込む座席は眠りの表層終点まではそっとおやすみ
起き抜けに椎骨は増え自尊心ぐんぐん伸びるアリスみたいに
これからはシン・ガリバーと呼んでくれ月に片肘ついて手を振る
ようこそと花は開いて深々とお辞儀祭りの街道を行く
飲み干して流星群の名産地ダストトレイルハーブティー
自販機をランダムに押す愚かさを讃えてチェリーパイの贈呈
抱擁をミュウヒハウゼン男爵と虚構を詠う者に幸あれ
飛ぶことはいとも容易い地に足をつけ生きていくことよりずっと
牛乳で出来た銀河に落下するセスナここでは誰も死なない
七色の犬と一緒に辞書を引くきみ永遠の代表だって
唐突に襲来をする覚醒の逆鱗を刺す祈りを以て
青い鳥通りすがりの預言者があなたは三度知らないと言う
逃げるように夜へ飛び込み手を上げる貝殻二枚人魚タクシー
夜ヶ丘すべての責務浮遊してぱちんとはじけるゆうえんち!
背徳は十二星座と安全バー代わりの角は魚の匂い
迷い込む百面鏡に覚醒が映り込むから叩き壊した
こんにちはコーヒーカップ高速で回して出来た
足跡が胞子のように光り出す
夜深く靴職人は三日月が起き出す前に獲りに行くこと
パレードは禊のようにしんしんと長針の音だけが響いて
覚醒が帳のように降りてくるその内側で息を潜めよ
夜は蝶ピンを刺しても輝きが最果てまでも届いてしまう
鳴るという行為自体の暴力を手のひらだけで留められるか
飛び出して行かなくっちゃと布団飛び出して征かなくっちゃと会社員
片隅に余韻を残す生きるため僕が作った
普遍/不変的日々にも凛と
----
テーマソングはBadMovesのTheVergeでした。
夢、頭の中にある街、そこに住む人たちについて。
とても楽しく作りました。上手くはありませんが、連作は新聞や雑誌に投稿するのとは違って楽しいです。
それでは。
おやすみなさい。
日記
泥の中にいる気分。仕事をし、毎日Netflixのドラマを見て過ごす。たまに犬と監視台に座り何もない場所を見つめ続ける。
病院に行く。早く平均的な人間になりたいですと伝えると、それが必ずしも良いことではないと言われた。突出した能力を伸ばすことも大切と。そんな能力はないし、他者と揃って歩めるようにならないといけない。僕は今後変われるんでしょうかと問いかけるともうお時間ですと悲しそうな顔をされた。そうですか。残念ですね。
仕事をする。猫背がひどくなる。感情的にならないための訓練をする。猫背がひどくなる。鏡の前で快活な笑顔を練習する。猫背がひどくなる。いよいよ丸くなってあとは眠るだけ。
明日こそはより良い人間になれますようにと神様に祈り、朝になればまた泥のような日々が始まる。
日記
梅雨の時期になりました。気分が落ち込みやすいので、より静かに過ごしています。仕事が忙しくなる気配がしてきました。忙しいと余計なことを悩まなくて済みますから、僕にとっては忙しい方が良いのだと思います。
忙しい時は昔絵本で読んだ虎のようにぐるぐる回ってバターになるような感覚になります。それはそれで楽しくもあります。
最近は短歌について考える時間が増えました。以前はせっせと投稿して掲載の有無に一喜一憂する日々でしたが、最近は投稿数を減らしています。丁寧に歌を作る。歌集だけでなく、多くの分野について学ぶ。投稿や賞の成果により感情を揺さぶられたり、投げやりにならない。今は短歌だけに人生の全てを賭けない(今後賭けるタイミングはあるかもしれない)そういったことを考えます。
ずっと焦っていたけど、あまり焦らなくなりました。今は長距離走のように出来るだけ長く走り続けられる体と心を持ちたいと思っています。続けていれば、思いもよらない場所に行けるかもしれないからです。行けないかもしれないけど。その時は見晴らしの良い丘でおにぎりでも食べたらいいですね。今この文章を書きながら想像の中でおにぎりを食べてみました。おいしい!
歩いても走ってもいい逸れたっていいただ道があることのうれしさ /短歌
それでは。
おやすみなさい。
掲載10 Meets Regional 7月号
雑誌・Meets Regional 7月号
岡野大嗣と詠むレッツ短歌!に掲載いただきました。評もいただきました。
テーマ「耳」
耳たぶの硬さに捏ねるパンの生地誰の耳たぶなのか知らずに
【評】
確かに「誰の」なんだろう。あっさり提示される不確かさに、日常が小さく歪み始める。
ありがとうございました。とても嬉しいです。
パンおいしい。
Meets Regionalは関西の街・飲食店を中心に様々なカルチャーを特集する月刊誌です。今月はストリートフード特集。飲食店の記事以外にもインタビューやサウナ、本の紹介など雑誌を通して様々なカルチャーに触れることができます。